正直(小林椋 + 時里充)
INTRODUCTION
オフィスミュージック
元オフィスの空間で、風変わりな光景が繰り広げられている。オフィスワーカー、デスクやチェア、機器の代わりに、チープな仕様の立体物(台座)とそこに取り付けられた機械、そしてディスプレイがあり、台座上では、機械が棒を動かしている。ディスプレイでは、チェアにモノが落下する。BGMは、環境に応じて止まったり。「彼ら」はけなげに働き、何かを(非)生産しつづけている…。
20世紀はオフィスの世紀だった。そこでは人や空間を効率的に配置し、時にBGMも採用された。オフィスは、人々を管理する近代的装置だったといえる。空間としてのオフィスは、デジタル化の進展ともに分散・多様化し始めたが、それでも主流を占めていた。しかしポストパンデミックの時代となった今、リモートワークとともに空きオフィスが激増している。
「オフィスミュージック」には、かつてのオフィスへのオマージュと、変容した「オフィス」への正直の思いがさりげなく込められている。人々を日々拘束する対面から、「オフ-オフィス」的な状況へ。しかし、情報監視や管理がより徹底されつつある現在。
「オフィスミュージック」では、人間中心主義から離れてモノたちが自律性を謳歌している様相に、微かな希望が見える。私たちが、「彼ら」とともに遊び心や想像力を発動させていくならば。
(四方幸子/「オフィスミュージック」キュレーター)
協力:一般社団法人 HAPS
PROFIE
小林椋 [http://pocopuu.net/] と時里充 [http://tokisato.info] によるユニット。2016年「できるだけ正直に演奏する」をコンセプトに結成。モーターが養生テープを巻き取ることで生れる緊張感のあるサウンドと、装置や素材の動きとの淡々として繊細なやり取りを行うパフォーマンスが評価される。2018年、BasicFunctionより「KB」をリリース。2019年メディア・アートの世界的なイベント「アルス・エレクトロニカ(オーストリア)」でHonorary Mentionsを受賞。