笹岡由梨子
INTRODUCTION
地球から消える
《地球から消える》は笹岡の他の作品と同様、緻密で記念碑的なビデオ・インスタレーションは西洋絵画史の系譜にあり、古典的なトロンプ・ルイユの手法にふさわしく、ユーモアとアイロニーに満ちたポスト絵画的な錯覚世界の空間を通して、鑑賞者の感覚を楽しませ、惑わせる。 この展示で、作家は自身が最も得意とするところを披露する。利用可能なあらゆる象徴の秩序を混ぜ合わせるのだ。オカルト、日本のビデオゲーム(ポーランドの領土をめぐるジークフリートとザンギエフの壮大な死闘)、崩壊していくポーランドの民族思想(ピウスツキ元帥の形で)といった要素が巧みに組み合わされ、ハイブリッド的作品となっている。 なぜ赤白のピエロギが揺れ、馬がラップをしているのか?排泄物は、作家の創作過程や芸術戦略とどのような共通点があるのか?ポーランドの名画『歓喜の熱狂』(1893年)に描かれた泡の代わりに、シャボン玉は何をしているのか?なぜ反乱を起こすのにまだ遅すぎはしないのか?《地球から消える》にはこれらの答えを探すことができる。 この作品は、作家が数年かけてポーランドの歴史とその分割について研究したプロジェクトの成果である。
PROFILE
大阪府枚方市出身。映像の中にある絵画との接点を探るべく、絵画における手の痕跡や筆致と近似した、高性能なCG映像にはない異物感や違和感を引き出し、独自のストーリーを紡ぐ。そして、緻密な構成や物語とともに、どこか懐かしい、けれど誰も見たことのない独特の世界観をリアルに感じさせる。また、2017年に参加した北マケドニア共和国でのアーティスト・イン・レジデンスで人の温かさ、心の豊かさにカルチャーショックを覚え、以降はアジアに最も近いヨーロッパ世界のリアルな人々、暮らし、歴史に関心を深め、中央・東欧諸国のリサーチや発表を重ねている。 現在、京都市のシェア・スタジオ”Vostok”を拠点に活動。
<主な展覧会>
2021年…「Zniknij Z Ziemi」Trafostacja(Szczecin/Poland),「Lost in Translation」ギャラリー@KCUA(京都), 「水の波紋展2021」渋谷区役所 第二美竹分庁舎(東京),「まみえる - 千変万化な顔たち」丸亀市猪熊弦一郎現代美術館(香川) 2019年…個展「太陽Ⅰ」同時代ギャラリー(京都),「Ascending Art Annual Vol.3 うたう命、うねる心」ワコールスタディホール京都(京都),「CELEBRATION -Japanese-Polish Contemporary Art Exhibition- in Szczecin」TRAFO(Szczecin/Poland),「ポーランド芸術祭2019 in Japan セレブレーション-日本ポーランド現代美術展-」京都芸術センター(京都),「虛寫邊界」關渡美術館(Taipei/Taiwan)