釜ヶ崎芸術大学
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INTRODUCTION
10年、卒業しない。
釜ヶ崎は大阪市西成区の一部の地域をさしますが、地図にあるわけではありません。「釜ヶ崎」とは、人生のなかで寄る辺がない、ひとりぼっちのような気持ちになったりする状況なのかもしれません。そこに表現しあう場と機会があると、さまざまなおもしろいことが起こるのです。弱さがちからとなるのはこんな時です。孤独を味方にしている人たちはコロナ禍においてもしぶとく生きていました。そんな釜ヶ崎の「であいと表現の場」を、大阪の船場にそっくり再現してみます。けれど、釜ヶ崎のおじさんたちを展示することはできません。おじさんたちや旅人が表した絵や物、ことばなどを段ボールにつめて運びます。また現在、わたしたちは地域コンポストに取り組み、育てているシマミミズ500匹のみみずコンポストを会場に設置します。ココルームの一角にある「本間にブックカフェ」は誰でも店長になって、お客さんに本を選んでさしあげる仕組みのブックカフェ。恩送りチケットという贈与の経済も働いています。「本間にブックカフェ」の一角では運がよければコーヒーを淹れるおじさんもいます。なお、釜ヶ崎の「ゲストハウスとカフェと庭 ココルーム」はこの春「釜ヶ崎芸術大学」に改名します。
PROFILE
2012年より大阪市西成区釜ヶ崎にて開講。NPO法人こえとことばとこころの部屋(ココルーム)が運営する。釜ヶ崎の街を大学にみたて「学び合いたい人がいれば、そこが大学」として、地域のさまざまな施設を会場に、ゆるやかなプロジェクトとして展開。天文学、美学、合唱など、年間約100講座を開催中。近年は釜ヶ崎に暮らす人たちの高齢化により、記憶や記録に注力しながら「であいと表現の場」として活動する。近隣の高校や中学校への出張講座や大阪大学との協働講座も実施する。2019年、ペシャワール会で井戸を掘ってきた蓮岡氏の協力を得て、釜ヶ崎の元日雇い労働者に教わりながら、こどもや旅人、難民など700人とスコップで井戸を掘る。コロナ禍では、ココルームを会場にオンラインも併用しハイブリッドで釜芸を粛々と実施。
展覧会•公演など:ヨコハマトリエンナーレ2014、釜ヶ崎オ!ペラ(2014〜2021)、アーツ前橋「表現の森」(2016)、鳥の演劇祭(2016)、大岡信ことば館「釜芸がやって来た!」(2017)、るんびにい美術館「えぇ街やで。ここは〜釜ヶ崎芸術大学の日々」(2018)、さいたま国際芸術祭(2019)など。